行形式による数式の挿入

Word 2010での行形式による数式の挿入

Word 2007以降の数式エディターでは、「行形式」と呼ばれる方法で数式を入力することができます。

「行形式による数式の入力」は次のような特徴をもっています。

  • 特殊なメタデータやタグ付けを必要とせず、Unicodeを使って1行で書ける。
  • Wordの入力補助を用いてASCII文字だけでも入力できる。

Word 2010での数式ツールの起動

数式を入力したい位置にカーソルを置いて、次のいずれかの操作により数式ツールを起動します

  • 「挿入」タブをクリックし、右端の[π数式]をクリックする。 (数式エディターの起動)
    左端の[標準テキスト]を2度クリックする。 (斜体にする)
  • ShiftキーとAlt キーと = キーを同時に押す。 (数式エディターの起動)
    Ctrl キーと i キーを同時に押す。 (斜体にする)

数式の挿入

※ Windows版のWordでは、数式部分の文字が自動的に数学文字になりません。そのため、利用者がフォントのスタイルを斜体に変更する必要があります。(PowerPointやMac版のWordでは、自動的に数学文字になります。)

「数式の挿入」の終了

  • 「数式の挿入」ボックスの外をクリックする。
  • Enterキーを押す。

※ Enterキーを押して不都合が生じる場合は、→(右カーソルキー)でブロックを抜けてから、Enterキーを押してください。

Word 2010での行形式による数式の入力例

「情報処理」の教科書の課題6の3つの式を「行形式」で入力してみます。

表 示 Wordでの入力
式1

y=-x^2+(2a-5)x-2a^2+5a+3

式2

((2a-5)/2,(-4a^2+37)/4)

式3

-\sqrt37/2<a<\sqrt37/2

はスペースの入力を示します。 \ は、日本語キーボードでは、¥になります。

Microsoftの解説ページに掲載されている例を見る =>  行形式の数式を入力する 

  • 例2 中学校の数学の問題    問題 [PDF]    ヒント [PDF]
  • 例3 水素分子の波動関数    問題 [PDF]    ヒント [PDF]
  • 例4 ヒュッケル分子軌道の計算手順    Wordファイル
  • 例5 正規直交基底        Wordファイル

Word 2010での行形式による数式の入力方法の概要

  • 行形式による数式入力の記法やASCII文字からの変換を有効にするには、スペースを入力します。
  • + - = & @ などを入力すると、(スペースを入力しなくても)その前の部分は自動的に解釈されます。
  • 自動的に解釈してほしくない場合は、( )でくくります。

以下の説明で、はスペース、は→(カーソルキー)でブロックを抜ける操作を示します。

\ は、日本語キーボードでは¥になります。

詳しくは、参考になるリンク の項に記載したページの情報を参考にしてください。

文字・記号

  • ギリシャ文字や特殊な記号は、TeXやMaximaに似た記法で、ASCII文字列から変換することができます。
  • ASCII文字変換では入力できない文字や記号は、数式ツールの「デザイン」タブから選択するか、記号と特殊文字の挿入を利用してください。かな漢字変換やUnicode番号による入力を利用することもできます。
Wordでの入力 表 示

\Pi

Π

\pi

π

\hbar

\angle

\infty

\scriptB

\frakturD

𝔇

\doubleA

𝔸

詳細は、Unicode Nearly Plain-Text Encoding of Mathematics   [PDF]の付録を参照してください。
また、Wordの「ツール」グループ から「数式オプション」ダイアログを表示し、「数式オートコレクト」ボタンをクリックして「数式オートコレクト」の設定を確認することができます。

かな漢字変換による入力

入力モードをひらがなにして、通常のかな漢字変換の操作で入力します。確定した文字のフォントは自動的にCambria Mathになります。もし、そうならない場合は、フォントをCambria Mathに直す必要があります。

 例  あるふぁ → α   だがー → †

Unicode文字コード番号による入力

Unicode文字コード番号を16進で入力後、[Alt]キーを押しながら X キーを押して変換してください。
文書に既に入力されている文字の Unicode 文字コー番号ドを表示するには、その文字の直後にカーソルを置き、[Alt]キーを押しながら X キーを押します。再度、[Alt] + X キーを押すと、元の文字に戻ります。

数式オートコレクトの追加

  1. [ファイル] タブをクリックします。
  2. [オプション] をクリックします。
  3. [文章校正] をクリックし、[オートコレクトのオプション] をクリックします。
  4. [数式オートコレクト] タブをクリックします。
  5. 修正文字列欄に\で始まるASCII文字列を入力し、修正後の文字列欄に変換後の文字を入力します。

文字列の追加

  1. [追加] をクリックします。
  2. 必要な文字列変換の規則をさらに追加します。
  3. [OK] をクリックします。
  4. [OK] をクリックします。

新たに登録したASCII文字列による変換は、ExcelやPowerPointでも利用できます。

分数

  • / の前後の連続する文字はすべて分母・分子になります。
  • 連続しない文字を分数にする場合は、( )でくくります。
Wordでの入力 表 示

ab/2

分数1

ab/2

分数2

a+b/2

分数の例1

(a+b)/2

分数の例2

a/b/2

分数5

a\ldivb

分数6

(a/b)\/(c/d)

分数7

(a/b)\sdiv(c/d)

分数8

上付き・下付き

  • ^ の後に続く文字が上付きになります。
  • _ の後に続く文字が下付きになります。
  • 連続する文字はすべて上付き・下付きになります。
  • 連続しない文字を上付き・下付きにする場合は、( )でくくります。
Wordでの入力 表 示

x^2

上付き

z_ij

下付き

(_1^2)C_3^4

上付き下付き

lim_(n->\infty) (1+1/n )^n =e

極限

文字修飾

文字装飾

  • 文字の後に文字の装飾として使われる結合記号を入力します。
Wordでの入力 表 示

a\hat■■

hat

a\pprime■■

ダブルプライム

(AB)\vec■■

べクトル


数式ツールの「デザイン」タブの「アクセント」から選択する方法もあります。

真上・真下付き

  • 記号に続けて文字を入力すると、上下に表示されます。
Wordでの入力 表 示

abc\above123

上下

\overbrace(a+\dots+a)^n

上かっこ
ブロックメニュー
文字装飾
真上・真下付き

区切り文字

  • かっこは中身の大きさに応じてサイズ調整されます。
  • 片側だけのかっこを表示するために、特殊な区切り文字が用意されています。開き側は\openもしくは\left、閉じ側は\closeまたは\rightから変換できます。
Wordでの入力 表 示

(x+y)^2

かっこ

\braa,b,c\ket

ブラケット

{\eqarray(x@y@z)}

ベクトル

{\eqarray(5x+3y=11@12x-4y=4)\close■■

連立方程式
ブロックメニュー
区切り文字とかっこ
縦棒

演算子

  • + - / > < : ! = 以外は、ASCII文字変換を利用して入力します。
Wordでの入力 表 示

a\divb

割り算

a\timesb

掛け算

A\superseteqB

包含

a\inB

要素

累和・累積記号/微分・積分

  • 累和・累積記号のようなn項演算子は、n項演算子を表す文字の後に、_ や ^ を付けて上付き・下付き文字を書いてからスペースキーを押します。
  • 分数や上付き・下付き文字と異なり、▒の直後の( )は組版結果に表示されます。( )を表示したくない場合は、\bigin, \end を用いてください。
  • 上付き・下付きの位置を明示的に指定する場合は、n項演算子の直後に1または2を付けてから、_ や ^ を入力します。
Wordでの入力 表 示

\sum_(i=1)^ni^2

シグマ

\int_-\infty^\infty■■e^(-x^2dx

積分

\int1_a^bx^2dx+\int2_c^dy^2dy

積分

関数

  • よく使われる関数の場合は、関数名の後にスペースを入力すると、斜体ではなく正体になります。
Wordでの入力 表 示

sin^2x

サイン自乗

p\of■■(u,k)=usin\phi+kcos\theta

関数定義


「ツール」グループ から「数式オプション」ダイアログを表示し、「認識済みの関数」ボタンをクリックして関数を追加することができます。

平方根

  • √の後ろの連続する文字はすべて平方根の中に入ります。
  • √(n&x)のように、&で区切って次数を入力することで、任意の次数の根を表示できます。
Wordでの入力 表 示

\sqrt>\cbrt

平方根

\sqrt(x)>\cbrt(x)

平方根

\sqrt(n&x)>\sqrt(n+1&x)

n乗根
ブロックメニュー
平方根

矢印

  • ->以外は、ASCII文字変換を利用して入力します。
Wordでの入力 表 示

n->\infty

矢印

P\LeftrightarrowQ

同値
ブロックメニュー
矢印

行列と行列式

  • \matrixで行列の記号を挿入します。
  • &で列を改め、@で行を改めます。
Wordでの入力 表 示

(\matrix(1&2@3&4))

行列

|\matrix(a&b@c&d)|

行列式

X^†=[\matrix(X_11&\dots&(X_n1@\vdots&&\vdots
@X_1n&\dots&X_nn)]

エルミート共役

\brau|v\ket=[\matrix(u_1&\dots&u_n)]
[\matrix(v_1@\vdots@v_n)]|

ベクトルの内積


数式ツールの「デザイン」タブの「行列」から選択する方法もあります。

複数行にわたる式

  • \eqarrayで記号を挿入します。
  • @で行を改めます。
  • &で縦位置を揃えることができます。
Wordでの入力 表 示

\eqarray(5x+3y=11@12x-4y=4)

連立方程式

\eqarray(5&x&+&3&y&=&11@12&x&-&4&y&=&4)

複数行に渉る式

{\eqarray(5x+3y=11@12x-4y=4)\close■■

連立方程式

条件

  • \casesで記号を挿入します。
  • @で行を改めます。
  • &で縦位置を揃えることができます。
Wordでの入力 表 示

\int\phi_iH\phi_j\dd\tau=
\cases(\thicksp&\beta," if "i,j" are adjacent"
@\thicksp&0,"if "i,j" are not adjacent")

条件

文字列

  • 数式文字ではなく、文字列として表示したい場合は、" "でくくります。
Wordでの入力 表 示

"BMI"="weight"/"height"^2■■

文字列

空白

  • 文字や記号の前後の余白は自動的に調整されます。
  • 幅指定付きのスペース文字を利用して、幅固定のスペースを挿入することができます。
Wordでの入力 表 示

a, b

a, b

a, b

スペースの挿入

\thinsp

3/18幅のスペース

\thicksp

5/18幅のスペース

\emsp

1文字幅のスペース
ブロックメニュー
空白

参考になるリンク

Microsoftの解説ページ

「Microsoft Wordの数式の基本」  岩永 信之氏

"Unicode Nearly Plain-Text Encoding of Mathematics" by Murray Sargent III

文字・記号一覧

分類別の一覧表

アルファベット順の一覧表  

よくある質問

よくある質問の項を参照してください。

謝辞

本ページの情報の多くは、岩永信之氏の 僕が TeX を使うのを辞めた3つの理由  というページの  Word の数式の基本 の記述にもとづいています。貴重な情報をご提供くださった岩永信之氏に深く感謝いたします。